DeSs「面」菊地敦己

デザインの勉強会「DeSs」に行ってきた。2015年のオリンピックエムブレム問題をきっかけにデザイナーの松本弦人さんが始めたプロジェクトで、さまざまな領域で「グラフィックデザイン」に関わる人をゲストに、<グリッド><広告><模倣>などのタグ付けをしながら講義・議論を行ったものを板書・文字起こし・写真・映像などの手段でアーカイブしていく、というもの。

Web上に掲載されている板書のアーカイブには服部一成さんの「グリッドは一度も使ったことがない」を始め、他では聞けないような発言が並んでいるし、参加者も一線で活躍する同業者の方々が集まって議論しているような状況は福岡では成立しないよな…と、以前から行ってみたかったイベント。

そんなDeSsが会場をVACANTに変えて始める第二期初回のゲストが、以前からフォローし続けている菊地敦己さんということで、勢いで参加してみた。

菊地さん、昨年に行われたJAGDA福岡主催のデザインワークアウトというイベントの中で、僕と岡崎とものりさんの二人が聞き役になってお話を伺うトークセッションがあったのだけど、二人ともファンとしての姿勢が強すぎて、菊地さん自身の仕事の解説に、二人で「なるほど…」「すごいですね…」と感心している内に終わってしまったのが心残りだったので(とても楽しくて贅沢な時間だったけど)、主催の松本さんや他の参加者がどんな形で菊地さんに絡んでいくのか、というのも気になっていた。

以下、詳細はサイトに後日UPされると思うので、自分が忘れないようにメモ的に書く。

今回からは黒板ではなく模造紙に記録。ポスターなど軽いものは上、本などは下に配置され、その近くにコメントが随時書き込まれて行った。タグを元に質問する形式については「デザイナーって、普通に質問しても答えてくれないでしょ?」と松本さん(@二次会)。

個人的に収穫だったのはレイアウトについての話で、松本さんの問いかけによって菊地グラフィックの仕組み(の一端)が明らかになっていった。例えば比率は写真の4:3が基準になることが多く、一番しっくり来るサイズ感なんだそう。これを判型、版面、余白、トリミングなどに執拗に使ってみたり、1:1、4:5、6:4.5、16:9といった他の写真・映像のフォーマットと組み合わせて独自のグリッドを作る(スイス式のグリッドシステムは、出来上がりが似て来ちゃうから使わない。松「絵画的な方法論がグリッドになっている」)。

「しっくり感」を持った、ある意味で黄金比のような完璧な要素を組み合わせてベース(松「強固なフォーマット」)を作り、その上で自由な形状や配置のオブジェクトを自由に配置し、その中でもまた法則性を見つける(菊「法則を発見したときにデザインが終わる」)。

こうした流れから、一見乱暴に見えるのに自然で魅力的に感じる平面(松「ただの面がただの面でなくなる」)が生まれているのか、と理解した。
※今回は話題に出てこなかった「色」の要素も、見栄えの良さや納得感に対する影響は大きいと思う。

初期の仕事。若林ケイジさんのブランド「national standard」のポスター。既製フォントの扱い方が分からなかったので、全ての文字を作字したとのこと。当時のカーニング至上主義へのアンチの気持ちもあったらしい。2006年にJAGDAの新人賞を取られたときの講演会で「出来ることしかやってないんですよ」と話されていたけど、その時点の自分の持っているスキルや状況で、どうすれば実用的で、見た目にも新しく、かつ周囲状況への批評性を持たせられるのか…という課題への回答が、菊地さんのデザインなのかもしれない。

「はれ」のロゴは催促の電話を受けながら片手で描いてたら(写真左上)出来てしまったらしい。完成品の紙袋に、そのときのメモが挟んであった。松「これは他の仕事に比べてデザインされてるね」菊「描いたら出来ちゃったので、先を見てみたくなっちゃったんです」。

松本さんは最初の方に出てきた「パンとエスプレッソと」の段階から「これ、デザインされてないよね?」と何度か言っていたけど、

「クライアントからパン焼き機が余っているから何かやりたい、という段階から相談が来ていること」「お店の名前自体が菊地さんの命名であること」「単体では個性が弱くても、同業他社や世の中に既にあるものとの関連性の中では個性があること」

など、表面に現れている視覚的なグラフィックデザインだけではなく、それが成立するためのさまざまな配慮が「デザイン」されているということなんだろう。

 

サイトから漂う怪しい雰囲気に誘われて参加したDeSs、今回から会場が広くなり、参加人数も増えたことで普通の講演会っぽい雰囲気になっていたのは残念だったけど(主催の皆さんすみません/次回は改善するって言われてました)、一人のデザイナーの仕事を、本人同席の上で分析していくライブな時間はとても貴重だった。

ちなみに二次会もセッティングされていて、久しぶりに会った人たちや、職域の少しずつ違う同業者の方々と話せたのも良かった。UXデザイナーとかサイバ◯エ◯ジェントの人が語る菊地評とか、もっと聞いてみたかったなー。DeSsの皆さんありがとうございました。

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