みずのき美術館 HOME PARTY04 飛ぶ絵

連休に家族で京都に行った際、亀岡市の『みずのき美術館』で行われている『HOME PARTY04 飛ぶ絵 みずのきと大原大次郎と菊地敦己』に行ってきた。大原さんと菊地さんにはそれぞれ面識があって気になっていた展示だったし、たまたま京都駅から電車で一本で行けることが分かったので、家族と別行動の時間をもらって行かせてもらうことに。まさか来られるとは思っていなかったので(どうせ東京方面だろうと思ってましたすみません)テンションが上がる。

会場は、障害者支援施設『みずのき』で行われていた絵画教室(1964年〜2001年)の作品を収蔵・展示するために、2012年に開館したみずのき美術館。

建築を手掛けたのは『Dior GINZA』などで知られる建築家の乾久美子さん。大正時代に建てられ、理髪店として使われていた2階建ての町家をリノベーションしている。

VIは今回の出展作家の一人でもある、菊地敦己さんによるもの。明朝体のロゴと理髪店時代の回転するサインが目印になっている。これ以外にも建物の形と「M」をイメージしたシンボルマークがあり、Webや印刷物で確認できる。

作品そのものを撮影しなければOKですよ、と伺って中の写真を撮らせて頂いた。展示タイトルは床に。

1階の様子。左手に見えるのが菊地さんの作品。シアンとマゼンタ。大判の作品なんだけど、大型のプリンターで一気に出力しているわけではなく、分割して小さな紙に出力したものを、複数枚貼り合わせていた。通常、デザイン制作の際に用いられる方法をあえて作品に使っているんだと思う。同じ色でも少しずつ誤差が出てしまうことや、貼り合わせる部分のディティールが表現の一部になっている。

大原さんは床にチョークで鶴の絵を描いていた。フライヤーに使われていた原画はIllustratorのパスで描かれていると思うんだけど、それを手描きで再現できる「手」の技術が羨ましい…。

『みずのき』の絵画教室の作品も、床に近い高さや、地下室の床に設置されている。「外部のアーティストとの連携もコンスタントに行っていて、人によって地下の空間の使い方が変わるのが面白いです」とスタッフさん。

2階へは靴を脱いでスリッパを履いて上がる。このスリッパ、ちょっと暗くて、湿気のある佇まいがこの場に合ってる気がする…と思ったのは、「障害」と切り離せない関係の「病院」を連想してしまったからかもしれない。

階段を上がった先には、作品が凧になって浮かんでいた。位置関係は1階とほぼ同じになっていて、床にあった作品たちが、空へ浮かんでいくような動きを想像することが出来た。

ただ、確かに展示タイトル通りの「飛ぶ絵」にはなってるけど、初めて出会った『みずのき』の作品のインパクトが大きかったので、2階のスペースでもそちらをもっと観たかったな。ただ、そうすると空間全体の印象は弱まるわけで、塩梅が難しいですね。

逆に、この空間や所蔵作品に鑑賞者を呼び込むために二人が企画した展示だと考えると、まんまと釣られて京都まで来て作品に感動しているわけで、狙い通りの形になっていると思うとちょっと悔しい。

ちなみに2階の正面側の窓。目の前の道は昔から使われてきた街道で、ちょうど美術館の手前でT字路になっている。その立地に着目した乾さんは、街道がそのまま反対側に抜けていくような動きをイメージして、施設の前後を大きな窓で挟む形にした。

こっちが反対側。すっきりした美術館の館内から、両隣の家のベランダや庭、奥には山々が見えて気持ちがいい。美術館の正面の通りは通学路になっていて、小学生たちが行き帰りに館内の様子を覗いて行くそう。

みずのき作品を閲覧できるデジタルアーカイブも用意されている。
今回、一番印象に残ったのが、木や家などの身近なものを抽象的な形・印象的な色使いで描いた作品たちの魅力だった。

 

障害を持った人の絵というと、福岡にもアトリエブラヴォ工房まるなどの施設があり、そこで描かれている絵には魅力があるし、イラストレーションとしてTシャツや手ぬぐいなどのグッズになって人々に親しまれている。

それに比べて、ここに所蔵されている作品たちは、絵画・美術作品としての印象が強かった。実際、アール・ブリュット(西洋美術の訓練を受けていない人によるアート)の拠点として知られているスイス・ローザンヌの『アール・ブリュット美術館』に作品32点が永久収蔵され、国内でも各地の展覧会に作品が貸し出されるなど、評価は高いようだ。

そのきっかけになっている人が、当時絵画教室を開かれていた日本画家の西垣籌一(ちゅういち)さん。会場に置かれたいくつかの資料を読んでいると、色や形のトレーニング、紙面の埋め方、興味への向き合い方などの一端を知ることが出来て良かった。

個人的にも3年目になる専門学校のグラフィックデザインの授業で活かせそうな、一連の作品を作り出すルールの考え方や、テーマの設定の仕方、基礎の積み上げ方について学べることも多かった。

 

規模が大きかったり、著名な人の作品が並ぶ展覧会も好きだけど、そこで流れてくる情報を受け取るのに精一杯になったりすることも良くある。今回の展示では、菊地さん・大原さんという人を入り口に、普段は訪れることのない場所に行って何かを受け取ろうと自分から歩み寄ることが出来たのが収穫だったと思う。

作品たちはもちろん、施設自体の空間がとても気持ちのいい場所で、30分ぐらいで京都市内に戻ろうと思っていたら、いつの間にか1時間以上も滞在していて、快速電車を逃してしまった。

展示は6月25日(日)まで。5月末までは『カメオカアートボンチ』という、亀岡市内のお店とアーティストによる同時多発イベントもあります(館内でもMAPを置いてました)。

 



みずのき美術館
http://www.mizunoki-museum.org/
Webサイト、最近リニューアルされたそうで、施設の規模に合った美しく機能的なレスポンシブサイトです。自分が苦労していたレイアウトの問題などをあっさり解決されていて、良いお仕事だな…と思いました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA