庵野秀明×ドワンゴ×麻生塾「プロジェクトスタジオQ」トークイベント

先週、たまたまエヴァンゲリオンのTシャツを着て事務所に行ったら、庵野さんが福岡に拠点を作る記者発表が行われることを教えてもらった。


拠点の名前は「プロジェクトスタジオQ」。庵野さんのスタジオカラー、ドワンゴ、福岡の麻生塾の3社が1500万円ずつを出資して、シン・エヴァンゲリオンを含むアニメ・CG制作・人材育成の会社を福岡市博多区に作るらしい。

庵野さんと言えばナディア、トップをねらえ!、エヴァンゲリオン…と、自分の中のサブカルチャー成分の根幹を成す作家の一人だし、福岡に来るなら一度はご本人の動くところを見てみたい。と思い切ってこのブログ名義で申し込んでみたら記者発表後のトークセッションにお邪魔することが出来たので、その様子をレポートします。

(キャラ立ちが素晴らしい登壇者のみなさん)

設⽴記者発表会トークセッション「福岡から始めるアニメ・CG業界の未来」
@Fukuoka Growth Next(旧大名小学校/福岡県福岡市)


登壇したのは左から髙島宗⼀郎さん(福岡市長)、⿇⽣健さん(麻生塾 理事⻑)、庵野秀明さん(スタジオカラー)、川上量⽣さん(ドワンゴ会長)の4人。

聞き手は「電気かデータが流れるもの全般」を得意とするフリージャーナリストの西田宗千佳さん。この手のイベントでは型どおりに話を振って終わることが多い気がするんですが、西田さんのおかげか少し突っ込んだ内容もちらほらと出てきていた。

以下、話題になったことの一部。会場でのメモを元にした原稿なので、発言が要約されてるのはご容赦ください。(正解はニコ生をどうぞ http://live.nicovideo.jp/watch/lv301655890

 
Q:今のアニメ業界の好調について。右肩上がりに見えるが健全なのかどうか?

川上:好調と言える。本数が明らかに増えているが、増えすぎて採算割れをしている作品が出てきている。ここ数年では海外の事業者(Netflixなど)による需要が上がっている。

 
 Q:制作会社の懐事情は伸びている気がしないが?
川上:最近、やりがいの搾取などと言われているが、一概にそうとはいえない。

庵野:現場は複雑なんですよ。こういうところでぽんと言えることではない。(一同笑)
課題としては人手不足。作品の数は多いが人が足りない。

川上:アニメの他にゲーム・IT業界がある。CGはゲームでもITでも必要。相対的にはアニメには人材が集まりにくい状況がある。アニメをゲームやWeb・グッズに展開する場合に、以前は手描きアニメとゲームの世界が分離していたが、これからは融合していく。相対的に労働環境も良くなっていくのではないか。

 

Q:なぜ福岡なのか?

川上:これは発表してないけど、庵野さんとタイに拠点を作れないかトライしたことがある。その中で、いろんな競争力を考えたときにやはり日本でやったほうがいいだろうという結論になった。日本のアニメの作り方は特殊。海外はディズニー・ハリウッドの発注で作り方が決まっていて、大きなエコシステムの中で日本の小さなエコシステムが永続するイメージが持てなかった。

 

Q:海外と日本の違いは?

庵野:内容ですかね?海外はカートゥーン=キッズ向けで、日本のアニメが持つ、さまざまな年齢層が観られる多様性に対応できない。作法が違ってそこに合わせるのに疲れた。

川上:じゃあピクサーで作ればいいじゃんって話になりますよね。国内の場合、なぜ東京じゃないのかって話になるけど、本質的には縁があったって言うことだと思うんですよね。今日も発表会に市長が来てくれて、明確な支援をしてくれるというのも大きい。国内の場合、なぜ東京じゃないのかって話になるけど、本質的には縁があったってことだと思うんですよね。今日も発表会に市長が来てくれて、明確な支援を示してくれている。

 

Q:市長はお話があったときにどう思ったか?

高島:コンテンツ産業に力を入れているので、こんなチャンスは絶対に逃せない!と思った。我々が使えるのは立地交付金とか、あれですよ(一同笑)

ここで新しい人材が産まれるということは、福岡に還元されるということなので、嬉しいことです。
(以下、市長による福岡市のPRがしばらく続く。福岡市は県外から拠点を進出する際の助成を充実させており、これと麻生塾による影響が、カワンゴさんの言う「縁」の大部分なのかなと思う)

 


Q:変化していく業界で、どのようなスキルが必要だと思うか?

川上:アニメ業界の外側のIT企業として、興味を持っているのはアニメ制作ツールがUnity(統合型ゲーム開発環境)になったこと。ゲームとアニメのアセットを同時に作る方法が容易になった。画像処理ではディープラーニングで実写からアニメを作るとか。

庵野:変化しているのは業界の構造で、個人のスキルはそう変わらない。唯一必要なのはアニメーションが好きという気持ち。それがあれば大丈夫(にっこり)

川上:…そうですよね。(一同笑)

 

Q:Unityでプリビズ(本番撮影の前に、簡易的なCGでチェックを行う)が簡単になると思うがどうか?

庵野:僕は使ってるけど日本の映像の現場では認められないんですよ。緩やかに変わっていくと思うんですけど。シンゴジラで起爆剤になればと思ったけど、認められなかったですね。

(庵野さん自身は特定のツールについて言及はしてなかったので、実際にUnityを使ってるかは分からなかった。富野さんのFinalCutみたいに、ツールメーカーが取材してくれたらいいな)

 

Q:スタジオQが求める人材は?

庵野:アニメーションが好きなら大丈夫。アニメーションって大変なんですよ。好きじゃないと続かない。でも実写よりアニメのほうが儲かります。今はそういう時代なんですよ。そういう意味ではCGで作るアニメーションは増えていくと思うので、これから入る人はデジタルを身に付けたほうが仕事の幅も広がるし…アニメが好きでデジタルも身に付けた人が増えてくれると嬉しいです。

川上:労働環境を良くすることにはカラーは一番力を入れている会社。Qはゲームとアニメのビジネス的な融合を目指しているので、安心して来てください。

 

最後に庵野さんが「アニメーションを作るという仕事は一生をかけてもいい仕事だと思っています。福岡にはけっこう上手いクリエイターが居るけど、東京に来てくれないんですよ。それなら福岡に拠点を作ればいいと思った」と、若干福岡を持ち上げる形でトークは終了。

庵野さんは言葉少なめだったけど、話し始めると会場にいる人が一斉に集中する気配が伝わってきて、シン・ゴジラによってアニメ監督→国民的映画監督に高まった世間の評価を肌で感じることができた気がする(かわんごさんはかわんごさんだった)。

ゲーム・アニメ・実写の制作現場がCG・Unityによって統合されつつあることや、映像配信会社の買い付けでお金の流れが変わってきていること。ちょうど最近、自分が遠ざかっていたゲームやアニメにもう一度触れてみようと思っていた時期だったので、コンテンツの提供側が考えていることの一端を知れたことも収穫だった。

市場の規模でいうと、今はゲーム>アニメ(と関連産業)>ITの順なのかなと感じた。規模の大きな話なので、自分の仕事を振り返って一瞬、不安になる気持ちも出てくるけど、限られた専門性の中で調子に乗っていると変化に対応できず危険!ということは常に考えているので(変化できているかどうかは別として…)、相対的に考える良い機会になりました。

会場で配布されていたスタジオカラー10周年記念誌。細めで見るとNERVロゴに見える配色…!中には安野モヨコ氏の漫画やスタッフへのインタビュー、貞本義行氏の描き下ろしイラストなど見応え充分。エヴァンゲリオンはTV版の放送当時に影響を受け過ぎて、旧劇場版が終わったタイミングで集めた本やCDなどを全て処分して(好きすぎて嫌いになるやつ)距離を取っていたので、これを読んでリハビリしよう。


7/20追記:司会を担当されていた西田宗千佳さんによる記事も公開されました。
【西田宗千佳のRandomTracking】カラー・ドワンゴの「スタジオQ」は、アニメ業界の“人不足”問題を解決できるか – AV Watch

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