taromagazine™ / taro misako
THE FIRST BAD MAN
[Book]ミランダ・ジュライ「最初の悪い男」
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2018.9.7

ミランダ・ジュライと出会ったのはオモムロニ。さんのこの記事がきっかけで(12年前!)、ポスト・ソフィアコッポラのフレーズに反応して観てみた映画「君とボクの虹色の世界」が入り口でした。
その後は横浜トリエンナーレに出展されていた「廊下」でアーティストとしての彼女の仕事を体験し、初めての短編小説「いちばんここに似合う人」、映画「the Future」、ノンフィクション「あなたを選んでくれるもの」…とずっと作品を追い続け、自分にとって最も信頼の置ける作家の一人に。

そんなミランダの初めての長編小説「The First Bad Man(最初の悪い男)」。2015年に英語版が出版されてから、ずっと翻訳されるのを待っていたのですが、先月、3年越しにようやく日本語版が出版されたのでした。

43歳独身のシェリルは職場の年上男に片思いしながら快適生活を謳歌。運命の赤ん坊との再会を夢みる妄想がちな日々は、衛生観念ゼロ、美人で巨乳で足の臭い上司の娘、クリーが転がりこんできて一変。水と油のふたりの共同生活が臨界点をむかえたとき――。幾重にもからみあった人々の網の目がこの世に紡ぎだした奇跡。待望の初長篇。

一般的に判断すれば「終わってる」と言ってもおかしくないぐらい風変わりな行動ばかりの中年女性シェリルと、いわゆるビッチのクリー。この二人の関係は最悪で、どちらの描写も序盤は読み進めるのもしんどかったのですが、中盤、「暴力」を使った奇妙なコミュニケーション(護身術のDVDを観ながら、悪漢と女性の役を演じてファイトする)が始まった辺りからぐいぐいと引き込まれ、さらに関係は二転、三転し、意外なんだけど妙に説得力のある展開が異常なテンションの高さで描かれ、その勢いで5日ほどで一気に読み終えました。面白かった!


読み終わった後、作中でシェリルがうろ覚えで歌うデビッド・ボウイの曲をYouTubeで聴いてみました。
映像的な表現も多かったので、映画のエンドロールを観ているような気分に。

普段はそれほど本を読まないので、こんな表現・展開は見たことない!みたいなことは書けないんですが、主観としてはそんな印象で、性や暴力といった人を普遍的に惹きつけるモチーフで全体をドライブさせつつ、ミランダ流のユーモアや寂寥感溢れる描写が満載で、久しぶりに濃厚な読書の時間を味わいました。あまり書くとネタバレになってしまうけど、作者が母親になる経験を経たのも大きかったんだろうな。

異様にミニマルなのに、これまでの著書の中でも最高に格好いい装丁は、ミランダの夫であるマイク・ミルズによるもの。新潮クレスト・ブックスというレーベルから出ていますが、このレーベルの本のフォーマットはとても好きで、特に表紙がハードカバーじゃないところが読みやすくて気に入っています。

余談

最近は文章を読むのが自分の中のちょっとしたブーム。妻のeさんもそうだけど、自分が素敵だなと思う人達はだいたい本が好きな人達なので、そうした人に少しでも近づけるよう、興味を持てそうな本を少しずつ読んでいこうと思います。次はデザイナーの野見山さんとミランダの話をしているときに話題に出てきたレイモンド・カーヴァーを読むか、「いちばんここに似合う人」を読み返すか…