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Itoshima Arts Farm
糸島芸農 – 糸島国際芸術祭2018に行ってきた
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2018.10.27

以前に訪れてとても良い体験をさせてもらった糸島の国際芸術祭「糸島芸農」が4年ぶりに開催されている(10/28まで)。古くから大陸との窓口として栄えてきた糸島を舞台として、国外からくるアーティストとそれを見に来る人を「マレビト」とする「マレビトの通り道」が今回のテーマ。

以下、ざっくりレポートです。写真が40枚以上あって長いし重いページなので、時間がある時にお読みください。

スタート地点、一貴山駅前。ここでチケットと地図を購入(1000円)。レンタサイクルを借りて回るつもりだったけど、出払ってしまっているということで、歩くことを決意。

隣の建物では1つ目の作品、渭東節江「塩を編む」。かつて糸島半島に存在した「シガ」という、魚を売る女性行商人がいたことから発想した作品。紙で編まれた網の下には、紙の船に乗った塩が。塩、手作りだそう。

次の展示会場へ。先崎哲進さんのロゴがいい仕事をしている。

民家を使ったレジデンスがそのまま展示会場になっていた。

牧園健二「風の通り道」。牧園さんは前回のインスタレーションが印象に残っていたので、期待していた作品の一つ。映像、スライドショー、ラジオの音など複数のメディアを使った作品になっていた。

とても良かったけど、作品の説明が一切なかったので、この地域に伝わる何かを元にした作品なんだろうな…ぐらいの理解しか出来なかったのは残念だった。ヘッドフォンから流れてくる、弾き語りの歌が良かったな。

同じ建物で展示されていた、イン・ユー・チャン(オーストラリア)の写真作品。

展示空間の隣で、レジデンスの生活空間が丸見えになっているのが良かった。これとセットじゃなかったら、受ける印象が違っていたと思う。

さらに歩いて次の会場へ。メインビジュアルと同じような写真を撮ってみたり

大好きなビニールハウスを撮ってみたり。人の作品を観ているうちに、日常の風景も作品みたいに見えてくる…というのはよくある話だと思うけど、こうした視点の変化を促せるのはアートの良いところだと思う。

次の会場のStudio Kuraへ。Kuraは糸島芸農を主催しているアートカンパニーで、アーティストの松崎宏史さんが「糸島から世界へ文化発信」をモットーに2009年に設立。古い蔵を利用した場所で、絵画造形教室、電子工作室、アーティストインレジデンス事業などを行っている。

Saga Unnsteinsdottir(アイスランド)「How I sleep at night.」。作者が蜘蛛になったという設定で作られた作品。

糸を使った作品より、こっちのドローイングの方に興味を惹かれた。タッチに北欧を感じる。

近くの会場で行われていた、作風の違う三人による絵画・イラストレーションの展示。

一人目、Corinne Caro(フィリピン)の作品。デジタルで描かれたイラストレーション…と書こうとして、どうして自分が「絵画」ではなく「イラストレーション」だと思ったのか、気になった。デジタルだからなのか、ポストカードサイズだからなのか…。

2人目、Aurora Solberg(ノルウェー)の作品。「湿度」がテーマみたい。これも北欧のテキスタイルにありそうなタッチで、土地柄なのかな…と思った。違うのは色使いで、少し暗い雰囲気があるので、商品より作品に向いてるんだろうな。

3人目はトロントのJinhee Jeon。3人の中ではこの人の作風がいちばん好きだった。タッチはもちろん、糸島でのレジデンス中に見た風景を描いているストレートなコンセプトが好みなのかもしれない。部屋に飾りたくなるような絵だった。

公式MAPに載ってない民家でも展示が行われていた。

中に入ると洋風の雰囲気の良い空間があり、デジタルで描かれたゴシック系のイラストが飾られていた。同人っぽい作風だったけど、場所とは妙にマッチしていて不思議な味わいを出していた。

公式Google Mapの指示に従って、稲荷山へ。ここで1ヶ所、会場を観るのを忘れていたことを主宰の松崎さんに、後から教えてもらうのだった…。

4年前は通らなかった山道は思ったより険しくて、予想外の#低山部案件。こんなこともあろうかと、ビブラムソール+テック系パンツ装備で来て良かった〜。

途中、鈴木淳さんの作品も。自然の中に急に現れる人工物。

山の中のお堂を使った、平川渚「ぬけ道、とおり道」。平川さんの作品は九州芸文館、三菱地所アルティアムでも見ていたので、これが3度目になる。足元には小動物たちの足跡があり、いろいろな物の「とおり道」になっているようだった。

カキ殻とお皿を使った作品。(糸島は牡蠣が名物です)

ビニール紐を使ったインスタレーション。今回、なぜか糸・紐を使った作品が多かったな。細くて扱いやすく、空間をいじりやすいから素材として使われやすいのかな。

メイン会場?の松末権九郎稲荷に到着。小規模なマルシェが行われていて、食べ物や食材を販売していた。今回のテーマが「マレビトの通り道」ということで、海外から糸島に移住した生産者たちによる農産物の販売も。

お昼はおむすびとお稲荷のセット(450円)にした。全て手作りの食事って、それだけでとても尊い…。

神社の中にも作品は展示されている。これはカナダのサラ・ティボによる作品。自然環境と屋内の境界を探る試みらしい。単純に見た目が好みだった。

遠藤文裕「スクラップブック」。展覧会・映画のチケット、レシートなどがスクラップされたもの。尋常じゃない厚さで、アウトサイダーな魅力を感じる作品。ご本人も会場にいて、来た人の似顔絵を延々と描いていたのが印象的だった。

ここでは台湾のChia-Hui Chenによるパフォーマンス「パンの軌跡」が行われた。小麦粉のフィールドを大地に見立て、パンで作った生物や自然、建築物を使って進化や原発、災害などの流れを描く無声の人形劇。最後には鑑賞者にパンで作られた小鳥が配られ、みんなで食べた(そのまま持って帰った人もいると思う)。本人の佇まいがとても格好良くて、素敵なパフォーマンスだった。

ここまでで4キロ近く歩いていて、次の会場までも4キロあるからこのまま引き返して帰ろうかな…とも思ったんだけど、ここで会えた主催者の松崎さんから「うみかえるには行かれましたか?」と言われて、行ってみることにした。

約30分の道のり、意外とスムーズに歩けて到着。ここは現代美術家・藤浩志さんの持っている壊れかけた古民家で、この日みたいにマルシェの会場や、教室などが行われるフリースペースとして活用されている…

と思って来てみたら、かえるの作品や、不要になったおもちゃを交換する「かえっこ」プロジェクトで集めた素材で作る恐竜や、イニミニマニモの依頼で作った「やせ犬」の兄弟作品にあたる猫の作品など、ちょっとした藤浩志美術館みたいな状況になっていて驚いた…!

一度実物を見てみたかったピカチュウザウルス。細かいものを見るのが苦手な人には辛そうな情報量!

パーツが並んでいるテーブルには「どうぞご自由に 綺麗に並べてください」と書かれていて、藤さんのユーモアを感じた。

これだけでもかなりお腹いっぱいになっていたんだけど、さらに「もう一つの建物もご覧いただけます」と看板に書かれていて、行ってみると…

藤さんの自宅兼仕事場が公開されていた(写真・SNSもOKということで掲載しています)。
木材を組み合わせてセルフビルドで作られていて、壁は恐らく世界初の「ぬいぐるみ断熱」。
空間のいたる所に過去の作品や資料も展示されていて、生活空間をそのまま公開するスタイル、すごいなあ。

お家の一角には「ほぼ常設展示・ゲームに夢中な高校生(パフォーマンス)」が。恐る恐る写真を撮ってみたけど、藤さんのご家族なのか、近所の人なのか分からない感じが良かった。ちなみに遊んでいたのはフォートナイト。

自分も一応クリエイターと呼ばれる仕事をしているけど、毎日の生活や環境はぜんぜんクリエイティブじゃないので、制作活動と住処づくりと日々の暮らしが一体化した状況、滅茶苦茶良いなと思った。


以上で全8kmほどの行程を終了。毎週ジョギングで走っているのが6kmだから、その代りとしては充分だったんじゃないかな。糸島芸農、いわゆる観光を主体とした全国で行われている「国際芸術祭」と比べると規模はとても小さいし、去年に比べると作品も玉石混交だし、お客さんも関係者が多い芸術祭だと思う。だけど、糸島を拠点に国際的なアーティスト・イン・レジデンスを行っているStudio Kuraという集団とそのコミュニティの合同展覧会だと考えると、とても健全で気持ちのいいイベントなんじゃないかな、と感じた。

今回は一人で回ったけど、アシスタントの福田さんや、専門学校の学生たちと一緒に回ってみたくなるような芸術祭だったな。次回も行われるなら足を運んで、4年前・今年との変化を見てみたいなと思った。

糸島芸能は明日、10/28(日)まで。この記事を読んで興味を持った人がいたら、ぜひ足を運んでみてください。