taromagazine™ / taro misako
PLAYBACK 2018
2018年の仕事をスタッフ対談で振り返ってみた
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2018.12.28

今年はWebサービスのnoteがブレイクして、デザインやクリエイティブに関わる人の生の言葉が世の中に一気に溢れた年だったと思います。そんな流れに乗って、僕も仕事の話を書けたら…と思っていたんですが、振り返ってみると自分語りばかりで仕事についてほどんど書けていなかった気がします。

そんなわけで、一年の最後ぐらい仕事の話がしたいなと思い、アシスタントの福田さん(福田奈実)と今年一年の仕事について30分(長いと編集が大変ですからね)喋ったものを文字起こしして、記事にしてみました。

同じような仕事をしている方や、デザインの仕事に興味がある方に楽しんで頂ければ幸いです。では、どうぞ。


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三) じゃあ、今年印象に残った仕事をいくつか挙げて、1つ1つについて振り返ってみましょうか。この前、忘年会の時に「色んな仕事が出来てよかった」って言っていましたよね?それは例えばどんな仕事ですか?

福) 私が印象に残ったのは『箱根ナイトミュージアム』と『オランダハウス』ですね。ボリュームが大きい案件だったからこその達成感があったし、色んなツール展開のデザインを行う中で身についたことも多かったです。

オランダハウス

三) Yahoo!ニュースでも話題になった「肥前さが幕末維新博覧会」のオランダパビリオンだったオランダハウスは、ロゴの制作から始まりサインや印刷物、ユニフォームからWEB制作までデザインにトータルで関われた案件でしたね。

福) 私にも三迫さんにとっても新鮮なお仕事だったんじゃないでしょうか。

三) でも、トータルで関わる案件自体は割と多いんですよね。今回は東京・佐賀を拠点にする、設計事務所のワークヴィジョンズさんと共同で作業を進められたのは大きな違いでしたね。以前から設計事務所さんとは仕事をしてみたかったんですが、中々機会が無かったので一緒に仕事を出来たのは良かったと思っています。

福) オランダハウスの仕事で、印象に残ったものがあって…「え、そこ?」って思われると思うんですが、タブロイドの表紙に使ったハーフトーン表現なんです。

三) へ~。素材が良い写真じゃなかったり、そのまま使ってしまうと効果的でない時に使う方法ですね。

福) こんな表現もあったんだと感動しました。

三) 感動は言いすぎだと思いますけどね!

三) オランダハウスのカフェ「シュガーロードマーケット」のロゴも「シュガー」の連想からハーフトーンを使っています。この網点を使った表現は九大芸術工学部の仕事で使い始めたのがきっかけで、それから味をしめて多用していますね。

福) 三迫さんはよく網点を使っているイメージがあります。

三) そうですね。九大のシンポジウム報告書の表紙でも使ってますね。コントラストのある白黒の同じパターンが連続することで「目がチカチカする」っていう表現があると思うんですけど、「光」を感じるというか。見る角度や距離によって錯覚によって新しいパターンが生まれる、動きの効果を狙えてるのではないかと思っています。


箱根ナイトミュージアム

福) あとは彫刻の森美術館の『箱根ナイトミュージアム』ですね。

三) ナイトミュージアムのメインビジュアルについては僕と福田さんでデザインを出し合って選んでもらった結果、英語のタイトルは僕が、日本語のタイトルは福田さんが作った案に決まりました。これはボリュームが大きくて作るのが大変でしたよね。途中で僕がアイスランドに行ってしまうし…(もちろんスケジュール調整はしっかりやっています)

福) ははは(笑)。でも、ここで学んだことはとても多いと思います。文字組みの事や情報の整理の仕方をたくさん教えて頂いたので。今、別件のサイトを作っていても、どの情報を優先すべきかを意識するようになったし、作ったデザインをぱっと見た時に「ここでこの表現はふさわしくないな」とか「飾りが邪魔だな」とかが以前よりわかるようになった感覚があって。これは箱根のお仕事に関わらせてもらえたおかげだと思っています。

三) 印刷物から会場のサイン・キャプションまで全部で16ツールくらい作りましたね。サイン関係ではビジュアルが使えなくて文字だけで表現しないといけないことや、原寸のスケールで分かりやすく伝えないといけない場面がたくさんありました。指示は入れながらですけど、だいぶ福田さんに任せて進められたので良かったですね。

福) 関さん(彫刻の森美術館)が内容をまとめてくれたのでやりやすかったなと思います。

三) オランダハウスでスケール感の大きい仕事を経験していたから良かったですね。
あと、2人だと「原寸で出力して確認する」作業がスムーズに行きましたね。一昨年前まで1人だった時は夜な夜な出力して、切って貼って…を繰り返していて本当に大変でした(笑)。

福) (笑)。効率が良くなったなら嬉しいです。


Creative Residency Arita


三) あとは、Creative Residency Aritaのサイト。全部英語でWebサイトを作ることはなかなか無いし、海外の色々なレジデンシーのサイトをリサーチしたりしてデザイン出来たので、普段と違うレイアウトが出来てよかったですね。

福) 最初に出ていた、モノクロ写真にカーソルを合わせるとグラデーションが付くっていう案も良かったですよね。結局無しになりましたが…

三) あれも良かったですよね。でも、ディレクターの石澤依子さんが「こっちがいい」という指示をちゃんと出してくれたり、好き嫌いをはっきり出してくれたのが強いディレクション力になって、今の形に上手くまとまったと思います。

福) この仕事は三迫さんのラフを元に私がレイアウトをさせてもらったんですが、途中で「いい感じですね」って声をかけてもらったのがすごく嬉しかったです。

三) そうなんですね。福田さんも今年で2年目になって、作ってるのを横で見ながら思ったのは、福田さんの作業を「いいですね」って言って「止める」ような指示の入れ方でも「自分はデザインしてる」って言えるなって。放っておいたら別の方向に行ってしまう可能性もありますしね。

福) そうですね。

三) そういう作り方もあるな、っていうのが発見だったかなあ、と。


イラストレーション

福) 私は今年、お仕事としてのイラストをたくさん描けたのがとても嬉しかったです。

三) ああ、そうですね。『イーストコート青葉』のイラストとか、まだ実績にアップ出来てないですけど。

三) 福田さんのイラストについては、今は「こう描いて」と指示を出して描いてもらっていて…正直なところ、まだ「毒にも薬にもならない」落とし方になっているところがあるんですよね。

福) 毒にも薬にもならない?

三) もちろん機能はしているんですけど、今は福田さんの特徴が出ないようにディレクションしているので。見る人の印象には残りづらいけど、弱くても成立するところで使っているから「バランス」としては納得しています。もっと福田さんが上達して、個性も活かせてお客さんと見る人の要望も叶えられるイラストが描けたらいいですよね。

福) そうですね。

三) プロのイラストレーターはそれぞれ自分のタッチや特徴を持っていて、そんな人達と自分たちデザイナーがコラボレーションすることで良いものが生まれると思っています。今は僕の想定の範囲内でまとめてしまっていて、好きにやってもらう部分が無いからその辺が弱いかなあという気がします。
あとはイラストレーションを仕事にする時の技術的なところですかね。さっきの箱根の話と同じで、どこを強調して、どこを切り捨てるかという話になってくるのかな。

福) そういった検証の作業も、デザインだとすばやく確認出来ることが、イラストは描いてみないと分からないところがあるので、もっと描くスピード自体を鍛えなければと思っています。

三) 描く速さは必要だと思いますけどね。あとはスピードより、目的の形に早く辿り着ける手数の少なさが大事かなと思います。デザインもそうですが。

福) それができればもっと色んなことができそうな気がします。

三) まだ場数が少ないから、これからやっていけばいいと思いますよ。


かぐわし / kaguwashi

三) あとは山鹿の和紙アロマディフューザー「かぐわし」ですね。

福) そうですね、結構長く作業していましたよね。私がアシスタントに来た時(昨年の9月)からすでに話がありましたね。

三) 昨年の夏に制作が始まって、今年2月のててて見本市で発表するというスケジュールでしたね。かぐわしの良かったのは、率直に言うと「(ある程度)売れた」というところです。1つ4,600円で引き出物やギフトで買われる方が多いようで、詰替え用の商品もあるのですが、購入してくれるリピーターさんも結構いらっしゃるみたいです。

福) そうなんですね!

三) 詰替え用でも3500円とそんなに安くはないけど、それでも買ってくれる方がいてありがたいです。

福) 実際、香りもいいですし!

三) そうですね。KUSU HANDMADEの中村さんや波佐見の西海陶器さんという、長年お付き合いのあるお客さんの協力を得て…横のつながりでものづくりが出来ているのがすごく良いなあと感じました。
あと、香りが染み込む和紙の擬宝珠の形から、ベースの陶器の形まで自分がデザインしているものがほとんど無い(陶器は窯元さんの持っていた既存の型を使って作られています)っていうのも、作り方としては面白いなと。
最近はこういう物の作り方に興味があって、デザイナーの独断で作るのではなく、関わっている人たちの関係性の中から生まれてくる自然な落とし所って素敵だなと思っています。


えほんのえき

三) あとは宇部の幸太郎本舗TSUTAYAの児童書コーナー「えほんのえき」ですかね。独立10年目にして、初めての空間デザインの案件になりました。

福) ああ、そうですね!これもボリュームありましたね。

三) これとオランダハウスと、九大芸術工学部の報告書のタイミングが被って、燃え尽きてましたねこの頃は…。あ、福田さんの絵の能力が一番活かされていたのは「えほんのえき」のお仕事だと思いますよ。

福) え!本当ですか?そういえばこれも絵を描いていましたね。

三) そうそう。お客さん、工務店さんとイメージを共有する意味でも、この1枚が無かったら相当コミュニケーションが難しかったと思います。

福) そうですか、嬉しいです。渉さん(シェアオフィスのライター・佐藤渉さん)もこの絵を褒めてくれました。

三) そうなんですね。お店の照明が蛍光灯だったりして、どうしても作り込めなかった部分はあるけど、それでも自分達が考えたものが立体になるっていうのは初めてだったので、これはすごく良い経験だったなと思います。大変でしたけどね。

福) 私は仕切り板の制作がとても楽しかったです。曲線を使ったシンプルなフォルムでどれだけその動物に似せるかというところが難しかったですね。

三) 結果的にかわいく仕上がってよかったですね。

福) そうですね。最近はお店に行けていませんが、親子連れの方が集まっていたら嬉しいですね。

三) スペース自体に子供が集まる要素は無いから、本当はソフト面でそんな要素をもっと取り入れられたらよかったのかもしれませんね。でも、当初の「売り場+読み聞かせ会が出来る絵本コーナーにしたい」というお客さんの要望は叶えられていて、悪くないと思います。
この経験を生かして、もっと膨らませたことをできればいいですね。

福) もう一回くらい本屋さんのお仕事が来たら嬉しいですね。

三) そうですね。什器の制作から施工まで全部相談に載ってくれた「かしわ製作所」の柏さんもいい人でした。関わる工務店や設計の人が違えば、また別のアウトプットになるだろうから…どんな組み合わせでもいいから、また機会があればいいなと思いますね。


福) …お仕事の振り返りはこんな感じですかね。

三) はい。来年はどんな仕事がしたいですか?

福) うーん、これがしたい!っていうのは今すぐ思いつかないですけど…

三) そうなんですよ。よく聞かれるんですけど、思いつかなくて。最近、思いついた模範解答は、「いつも新しく来る依頼が自分を驚かせてくれるし、そんな状況にいつでもワクワクしていたいですよね!」
みたいな…

福) ははは!ポジティブ!

三) なんというか「自分がやってみたいって思うことより、やって来る仕事のほうが面白い」っていう状態に出来ることが一番いいことかな…と。そうそう、こっちが言いたかった。

福) なるほど~。

(収録:REC COFFEE薬院店)

***


今年は春に体調を崩したこともあり、仕事をセーブして体調優先で仕事をしていました。その影響で、シェアオフィスに所属する他の人たちが活躍しているのを横目に「自分ももっと仕事した方がいいんじゃないか」と不安になったりもしていたのですが、振り返ってみると今年もなかなか悪くない仕事が出来たんじゃないかな、と思えるようになりました。やってみて良かった。

うちの事務所は今日が仕事納めで、年明けは1/7(月)から仕事始めです。お休みの期間中もブログは更新されるはずなので、よろしくお願いします。

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