
Web上で話題になっていて気になったこの本、友人の三好剛平さんがfacebookで大プッシュしていたこともあって読んでみたかったんだけど、昨年12月に日本語版が出版されて以来どこも在庫切れになっていて、3刷目でようやく手に入れることが出来た。
「82年生まれ、キム・ジヨン」は韓国で2016年に発行された小説。1982年に生まれた女の子の中でいちばん多い名前=「キム・ジヨン」を持つ一人の女性が、成長する過程で出会うあらゆる種類の女性差別や困難を振り返っていくというもの。
韓国は儒教の文化や兵役があるせいか、日本よりも強い男性上位の社会のようで、子供を生むときに女児だと分かったら堕ろしてしまうケースがあったり、仕事で同期入社しても男性と女性の賃金格差があったりするみたい。そんな韓国社会で懸命に生きていくキム・ジヨンの姿に共感し、読んでいくうちに読者が「こんな世の中であって良いはずがない」という気持ちになることを目的としてデザインされた文章になっていると思った。
僕は日本で男性として生まれて普通に暮らしているけれど、無意識のうちに男性としてのメリットを享受していたり、それによって女性の現在の立場を維持することに加担してしまっている部分もあるのだなと、考えを巡らせるきっかけになった。
この本が良いところは「小説」という形態を取っているところかな。フェミニズムについて論じられた本はけっこう見かけるけど、どうしても固い話になりがちなので、連続テレビ小説のような日常の物語を通じて、女性の立場を疑似体験できるこの本は貴重な存在な気がする。女性はもちろん、多くの男性に読んで欲しい本だと思う。男性上位の社会、個人的に居心地の悪さを感じているところもあるので…。
2月にも短編集「ヒョンナムオッパへ」が出版されるようなので、こっちも読んでみようと思う。