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Typography Workshop
資料を見ること・真似ること。前崎成一さん「タイポ講座 (手書きロゴ書体の作り方編)」
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2019.7.2

数ヶ月前、アオバトの前崎成一さんによる「企業の暖簾づくり(ブランディング)講座」に参加したときに、こんな感想をブログに書きました。

アンケートに「前崎さんのタイポグラフィ講座はきっとみんな聞きたいと思う!」と書いておいたので、これも開催されるはず…。
先月まで教えていた福岡デザイン専門学校でもタイポグラフィに苦手意識がある人が多かったけど、前崎さんの手を使ったアナログ的なアプローチは絶対に響くと思うんだよな…。


その甲斐あってか、前崎さんのオフィスで「タイポ講座 (手書きロゴ書体の作り方編)」が開かれることに。
同じ日に富野由悠季展の講演会があり、どっちに行こうか迷ったんだけど、最終的にタイポ講座の方を選ぶことにしました。

会場に着くと、参加者は全部で12人。県外からの方も何人か来られていて、「みんな聞きたいと思う」と思った僕の感覚が間違って無くて安心した!

以下、ざっくりレポートです。細かい感想は一緒に参加していたヨシカワさんのブログに詳しく書かれているし、前崎さんのブログもあるので、そっちを見てみてください。

前半2時間は座学の時間。これまでに作られたロゴの完成形と、制作中に描かれたラフや原画、コンセプトをまとめたクライアントへのプレゼン資料・ボツ案(共に撮影禁止!)などを見ながら、前崎さんのアプローチに迫ります。

いちばん驚いたのは、前崎さんがスキャンするロゴの原画がA3用紙いっぱいの大きさで描かれていたこと。僕は大きくてもB5サイズぐらいが限界で、すぐにPC作業に行ってしまう方なので、A3サイズでも形や線が破綻しない(デッサン力があるってことになるんでしょうか)ことに衝撃を受けました。

九州大学の「language lounge」のロゴなんかも、パスで描かれた書体に見えるけど、全部手描きなんですよ…!どおりで、なんだか温かみがある形だな〜と感じていたわけです。
単純に手描きだから温かみがあるわけではなく、手描きを通じて身体的な気持ちよさ、視覚的な整合性を考えながら描くから、この着地になるんだろうなと思いました。

前崎さんは、手描きの他に篆刻(木・石などに彫られた印)なども使われるそうですが、古書などから文字をスキャンして使われることもあるそうで、さまざまな資料を見せてもらいました。普通の人が見ればただの古い本だけど、デザイナーが見れば宝の山…ただし、見る目のある人に限る!(僕はちょっと怪しい…!)

お互いの手描きロゴ作品を見せ合うおやつ休憩を挟んで、後半2時間はワークショップ。
前崎さんの事務所の上に入っている書道教室(お父さんが書家なんだそうです)に移動し、「桂離宮」「お豆の大福」の2つのグループに分かれて、筆・竹ペン・クレヨンでロゴを描いていきます。僕は「桂離宮」グループでスタート。

とりあえず壁に貼ってみたところ。僕は普通の書道になってしまった…。この時点で、ロゴらしく崩せる人はちゃんと崩せてますね…。
アニメーション作家の馬場通友さんが描かれた真ん中の袋文字とか、僕にはぜったい思い付かないです。

「お豆の大福」チームの方は筆文字との相性が良いみたいで、いい雰囲気。

真っ白の和紙を目の前に途方に暮れていると、前崎さんが「参考にしてみてください」と、さまざまなスタイルで書かれた昔の書家の作品集をたくさん持ってきてくれました。漢字別に崩し方を集めた本なんかもあったりして、めちゃくちゃ参考になります。

クレヨンや竹ペンも試しながら、みんなで書いた「桂離宮」。今回、竹ペンは初体験だったのですが、繊細な線と太い線の、予想外に強弱が付く感じがとても面白いなと思いました。竹を切れば作れるから、気軽に試してみてください〜と前崎さん。

最後にはみんなが書いた文字に○を付けて投票も行いました。ここで○が多く付いた文字は、パッケージにして店頭に並べたときにも目を引くものになる、という趣旨だったようです。

最後に少し時間が余ったので、それぞれが書きたい文字を好きな道具で書く時間もありました。
うろん(博多弁で「うどん」)、雨、おいしいごはんと楽しい食卓…と並んで、僕が書いたのは…

これでした。

竹ペンの書き心地や、線の雰囲気を見ていたら、どうしてもこの言葉が書きたくなったんですよね…。
何度も読んでいると、「さみしさ」という文字と意味がぼーっと分からなくなる感覚もあって、面白いかな、と…。
前崎さんにも「これは…ミサコさんらしいですね…(苦笑)」と、ややウケでした。


以上、あまり写真を撮っていなかったのでざっくりとした振り返りになりますが、充実した5時間になりました。
普段からSNS上で素敵なお仕事はいつも拝見しているものの、そこで見られるのは最終的な完成品なので、ボツ案や制作過程、考え方を直接レクチャーしてもらうのは貴重な体験でした。

また、前崎さんが日頃お仕事されている現場が会場だったこともあり、いろいろな資料を見せてもらったのですが、「新しいものを参考にするとデザインが似てくるので、古いものを参考にしているんです」と話されていたことが印象に残りました。


僕の話になりますが、普段の仕事では「自分は他の人と違う表現のスタイルを確立するんだ!」と、最近ではあまり資料を見ずに、自分の経験や身体感覚を使ってデザインするように心がけていました。それはそれで上手く行っている部分もあったと思うのですが、今回の「桂離宮」の書き始めのように、表現が一辺倒になってしまう恐れもありますよね。(ちょうどeさんからも「タロウさんは努力を否定して、感覚でデザインするのが格好いいと思っている節があるよね」と指摘を受けたところだった)

今回の講座を通じて、改めて「資料を見ること・真似る(学ぶ)こと」の大切さを感じられた気がします。
僕の仕事のアウトプットは前崎さんとは違うから、同じような資料に当たることは無いと思うけれど、自分らしいインプットを増やし、そこから学ぶこと、それを悪いことと捉えず積極的に取り組んでいくことをやって行きたいなと思いました。

ノウハウや考え方を惜しげもなく披露してくれた、前崎さんに感謝です。

夜は馬場さんと久しぶりに会えたので、薬院のヒラコンシェでパスタを食べながらおしゃべり。お互いに

「こんな風に人の時間を使ってしまって申し訳ない」
「自分の話なんかつまらないからどうしよう」

と思いがちな二人なので、意気はバッチリ。楽しい時間でした。
最近興味がある、自分の作品作りや個展をすることについても話せて嬉しかった。
形に出来るかわからないけど、少しずつ進めていくつもりです。