taromagazine™ / taro misako
Teaching Graphic Design
専門学校でグラフィックデザインを教える(1)展覧会のデザイン
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2018.5.28

某専門学校でグラフィックデザインを教えることになって4年目。毎年、何かしらの課題や反省を抱えて取り組んでいることもあり、現場で試行錯誤していることをブログに書いてみようと思います。ここを読んでくれている人の中には各地で先生のお仕事をされている方も多いと思うし、授業内容向上のための何かしらのフィードバックや情報交換のきっかけになればと考えています。

<基本情報>
・授業は毎週月曜日の9:20〜16:30の4コマ。
・学校は3年制。教室には2年生と3年生が同室に居て、両方を同時に受け持つ形式。人数は、全員出席で30人弱ぐらい。
・グラフィックデザインの科目は月曜日と火曜日で、火曜日はコンペ用のポスター制作などが中心。
 (他の曜日はパッケージデザイン、CG、イラストレーションなどの授業のため、月・火でグラフィックデザインの授業を完結させる必要がある)
・授業の内容は講師にお任せで、前期16回・後期16回の全32回授業があり、その間に春・夏・秋・冬休みが入る。

<今年度に入ってからやっていること>
◯課題:「展覧会のグラフィックデザインの実践」
・僕が実際にデザインを担当した、三菱地所アルティアム「森のヒミツ COMNPANY展」の会場に実際に足を運び、会場を見学。それぞれのツールが使われている状況を確認する。
・その後、「チラシ」「チケット(招待券・一般券・学生券)」「ポスター」の3種のデザインを制作し、発表する。
・素材についてはチラシのスキャンや、COMPANYのHPから画像をDLして使用すること。
※2・3年生共に初めてのテーマなので、両方共に同じ課題を出しています。

◯スケジュール
・1週目…チラシ制作スタート
・2週目…チラシ手描きラフチェック
・3週目…チラシ出力チェック
・4週目…チラシデザイン提出〜チケットデザイン開始
・5週目…チケット3種 デザイン提出
・6週目…ポスターデザイン開始〜原寸出力チェック
・7週目…デザイン3種発表・講評 ←この記事を書いてる日

◯実際の流れ
・1週目…チラシ制作スタート
初回の授業ということで、簡単な自己紹介・実績紹介の後に制作スタート。
「必要な情報が分かりやすくレイアウトされていること」「人目を引く・印象に残るための工夫をすること」「世の中に既にある良いデザインを参考に、クオリティを高めること」などを、スケジュールと一緒に紙にまとめて渡したけど、ちょっと抽象的だったかもと反省。

・2週目…チラシ手描きラフチェック~Illustrator作業開始
ここから毎週ごとに一人ずつ呼び出してチェックを行う。この段階で描ける人と描けない人の差が如実に現れる。手描きではなく、PC上でラフを作る人も居るからな(僕とか)…と思ってスルーした人が、結局ラフ段階で抱えていた問題点を解決できずに最終日を迎えててしまったりしたので、この段階でもっと厳しくチェックしておけば良かった。

・3週目…チラシ出力チェック
Illustratorの文字組みで、カーニングの「オプティカル/自動(メトリクス)」やテキストボックスの行末均等揃えぐらいは1年生で覚えているだろう…と思っていたら、意外と分かっていない人が多かったので焦る。基本的な余白(マージン)やグリッドの概念も知らない人が多かったので、帰宅してGW中に簡単な文字組みの基本の資料を作ることに。カイシトモヤさんの本のコピーとかでも良いのかな…と思ったけど、もっとピンポイントで伝えたかったので。

・4週目…チラシデザイン提出〜チケットデザイン開始
前週に続いて全員のレイアウト・文字組みのチェック。授業の時間が足りず、チラシ裏面のレイアウトが間に合わない人が続出する。COMPANY展は文字情報が多いので、初心者向けにはちょっと難しかったかもしれない。実際のチラシ裏面のレイアウト解説みたいなのが出来たらもう少し伝わったと思うんだけど、スライドの接続や大勢の前で話すのが苦手なのが手伝って上手く出来ないのが悩み。結局、一人ひとりに同じことを説明することになったりして翌日ベッドから起きられないぐらい消耗するので何とかせねば…。

・5週目…チケット3種 デザイン提出
チケットはサイズが小さいせいか、みんな比較的スムーズに出来ていた気がする。毎週文字組みをチェックし続けたので、流石に細部の完成度が上がってきた。

・6週目…ポスターデザイン開始〜原寸出力チェック
途中段階でもいいので…と全員に原寸貼り合わせで出力させ、画面で見るときと実際に壁に貼って見るときとの見え方の違いを理解してもらう。…つもりだったけど、欠席や間に合わない人も多く、全員のチェックが出来なかったのが残念。

・7週目…デザイン3種発表・講評
で、今日が発表の日でした(写真にはモザイクをかけてます)。
2年生と3年生に分けて、それぞれ全員で発表を行いたかったんだけど、他の人の発表中に印刷すればいいやと考えていた人が多かったのか間に合わない人が多かったので、急遽一対一で発表と講評を行うことに。これはこれで、それぞれに時間を使って話すことが出来て、課題についての感想も聞けたので悪くは無かった。本当はそれぞれのデザインについてや、展覧会のグラフィックデザインに何が求められていて、どういう回答が正解に近いのか?みたいな話ができると良いんだけど、まだまだ司会力が足りず、無念です…。


<今回の気付きメモ>
・この課題は2年前にミントデザインズ展で同じことをやったことがあり、とても好評だったもの。今回は久しぶりに展覧会の期間と課題の期間が合ったので実施できたけど、やはり好評のようでした。普段学校で作るポスターがコンペ用のものだったり(テーマも「食」とか、スケールの大きなもの)、架空のクライアントを想定しての課題が多い印象なので、実際に講師が取り組んでいる仕事を追体験するというのが、腑に落ちるみたいです。

・最初の数週はクオリティの低さに戸惑ったけど、回を重ねるごとに少しずつ完成度が上がっていって、最終的には僕が「負けた!」とか「こっちの方がお客さんが入りますね…」と思えるようなアイデアやレイアウト、文字組みが出てきて安心した。評価が低めの人たちでも、文字組みだけでも細かく添削して完成度を上げることで、全体の出来が見違えるほど良くなって見えるのも発見だった。

・評価する点が、大きく「表現のアイデア」と「細部・文字組みのバランス」に分かれることを再認識。上手い人は両方とも出来るけど。

・毎週、一人ずつ各5〜30分ぐらいかけてデザインチェックを行って、確実に完成度には反映されたけど、僕の体力が持たなかったので(月曜日の疲れが金曜日に取れるぐらいのスパン…)、もう少し省エネルギーに気を付けないと継続が難しい。

・フィードバックのために、次はここで実績を公開できるようなテーマにしたい。


<今、気になっていること>
・4年前に見学に行った京都造形大など、大学ではもっとコンセプチュアルな内容の課題が出ている気がする。僕が大学で授業を受けたことが無いのもあって、実践的な講習と、そうした講習とのバランスをどう取れば良いのか。そもそも前者は何をすれば良いのか、アイデアが浮かばないのが悩みです。
※たとえば立花文穂さんが「かたちのみかた」で実践されていたような演習なんかはとても興味があるけど、専門学校だし時間足りないし就職に繋げないといけないのでは…と思ってしまう…

・今は4コマとも実習になっているけど、インプットの時間がないのでどこかで作った方が良いのかな…と考え中。みんな寝そうで嫌だけど。スライドなど準備する時間と体力も不安なので、学校に居る時間だけで何とか準備ができないものか…。


ひとまず、現状はこんな感じです。改めて書いてみると、自分の振り返りにもなって良いですね。
もっとこうしたら良い、うちはこうやってる、などのご意見がありましたらメールやfacebookでお送りください。
よろしくお願いします!